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院長のひとりごと

2010/10/06 はた迷惑な大国  塩野七生さんの著書から


『ローマ人の物語』の執筆で著名な、塩野七生さんの最近出た新書(文芸春秋)

『日本人へ リーダー篇』を読んで、最近の時事を予見した文章を読み、感銘を受けました。

「乱世を生きのびるには」という小題のついた文章の中から、

(塩野七生さんは、イタリアに居住されていますので、そのおつもりでお読みください。2006年に書かれた文章です。)

『北朝鮮の核など話題にも上らなくなった。中国はあい変らず話題になるが

それも以前のような、躍進する大国というイメージではない。

幾分か諦めたという感じで、それは中国が、ヨーロッパ人の考える大国とは

全く違う大国になるのが明らかになりつつあるからだろう。

これまでの例ならば、国の経済力が上昇するとその国は、経済の向上で得た力を

国内のマイナス面を改善するのに使う。具体的には、失業者を職場に吸収するという形で。』

『だが、先進各国への中国からの密入国者はあい変らずだし、イタリアの中国人コミュニティの内部では、

先着の中国人が後者の中国人を奴隷のようにこき使って摘発される例は後を絶たない。

彼らによる、麻薬はもとより食品その他の非衛生的な物産の不法輸入も日常茶飯事と化し、コミュニティ内部に

司法関係者を潜入させようにも、顔かたちがあまりに違いすぎて 不可能。』

『中国は数多のマイナスを国内にかかえているからいずれ躍進も止まるだろうという 意見があるが、

私には中国は、マイナスを周辺にまき散らしながら大国への道を邁進していくと思えてならない。

大国とは何によらずはた迷惑な存在だが、最もはた迷惑な大国として君臨することになるだろう。

中国がWTOに加盟したときには、欧米先進国が作った世界貿易のルールにこれからは中国も従うと

思っていたものだが、それが今では、日本もふくめた先進諸国のほうが、中国が勝手に決めたルールに従うよう

に変わっている。グーグルをマイクロソフトをヤフーを見よ。』

『要するに今年は、何かと面白くない年になりそうである。激動する世界情勢下では主導権をにぎるしか勝つ道

はないが、安保理の常任理事国でもなく核ももたず、軍事力も満足な状態では海外に送れない日本が、

大国と思いこんでいたこと自体が妄想であったのだ。

もはや、大国らしい外交をすべきとか、フランスを見習えなどという迷い言を吐くマスメディアもなくなる

であろうから、それだけでも良しとすべきだろう。』

『主導権をにぎれなければにぎっている国の後に従う、というのもバカげたやり方で、

それで得るのはさらなる金を吸い上げられることでしかなく、こうなればおとなしい日本人も、

株主代表訴訟に似た行為を国に対して起すかも知れない。

援助外交と聴くと私は援助交際を思い出してしまうが、単なる売春を援助交際と言い換えたり、

単なるバラ撒き外交を援助外交と言い換えたりすることによる目くらましに欺されている余裕は、

もはやわれわれにはないのである。』

塩野七生さんは、日本の経済を向上させ、国力を充実するよう提言されています。

はた迷惑な大国  塩野七生さんの著書から
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